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■050 感性の主観的な条件としての空間
(b)
空間は形式
空間は人間の感性の主観的な条件
この条件のもとでのみ外的なものを直感できる
主体は対象から触発されるという受容性を持つ
この受容性が先だっていなければならない
空間は心にアプリオリに存在していなければならない
空間は純粋な直感=すべての対象がそのうちで規定されなければならない直感
さまざまな対象相互の関係を示す原理を含む

■051 人間の立場
空間について語ることができるのは人間という立場からだけ
人間が
 外的な事物を直観するために必要な主観的な条件
 対象によって触発されるために必要な条件
を捨てるなら空間は無意味

空間が事物に適用されるのは
 事物が人間に現れる限り
 事物が人間の感性にとっての対象である限り
のこと

この受容性の不変の形式を感性と呼ぶ

(直観されるのに)必要な条件が感性
すべての対象を取り除いたあとに純粋な直観だけが残る=空間

空間=人間の感性の特別な条件 は
 事物の存在の可能性の条件ではない
 自分が人間に現象として現れるために必要な条件

他の存在者の直観にだとうするものかどうかはわからない

人間にとって外的な現象として現れるすべての事物は空間のうちに併存する
この規則は普遍的に制約なしに妥当する

空間は対象が人間に外的なものとして現れることのできる場という意味では
実在性、客観的な妥当性を持つ

事物が理性によって物自体と考えられる場合
人間の感性の特性を考慮せずに考えられる場合は
この空間は観念性をそなえている
=事物についてのイデア
こう考えてしまうと、
空間は経験的な実在性をそなえている と同時に
経験についての超越論的な観念性もそなわっている
と主張してしまう。
=すべての経験の可能性の条件を放棄して空間が物自体の根底にある
 と考えると空間はなにものでもなくなる

■052 空間とその他の主観的な像の差異
外的なものにかかわる主観的な像のうちで
アプリオリに客観的だと主張できるのは空間しかない

空間において直観したものからは
アプリオリな総合命題を引き出すことができるが
他の主観的な像からは引き出すことはできない
(→045-048)

視覚聴覚触覚は主観的な特性という意味では空間と共通するが
空間とは異なり観念性は持たない
彩音色暖かさは、たんなる感覚にすぎず、直観ではないため
これだけでは客体をアプリオリには認識させるものではない

味や色彩は
対象が人間の感覚能力の客体となるために必然的に伴う不可欠な条件ではない

味や色彩は現象と結び付いているが
特殊な器官に偶然付け加えられた影響にすぎない
アプリオリな像をもつことはできない

空間は経験的である感覚的なものを含んでいない
物体の形状の概念や物体相互の関係概念が成立するためには
空間の規定を心に思い描くことができる
空間は外的な客観の現象にもその直観にも必然的なものとして伴う

■053 物自体は認識できない

空間の観念性(?) ≠ 感覚

物自体は経験によってはまったく問われない


第二章 時間について

第四項 時間の概念の形而上学的な解明

■054 時間のアプリオリ

(1)時間は経験的な概念ではない

時間という像がアプリオリなものとして土台になっていなければ
同時存在、継起的存在、をまったく知覚できない
心に思い描くことができない

■055 時間の必然性
(2)時間はすべての直観において土台として利用される必然的な像

現象一般から時間を取り去ることはできない
(現象から時間をはずして考えることはできる)

現象が現実性をもつのは時間においてのみ可能

現象は取り除くことができるが時間は取り除くことができない

■056 時間は一つの次元をもつ

(3)時間には一つの次元しかない

複数の異なる時間が存在すれば同時に存在することはできない
空間は複数の異なる空間が存在すれば同時に存在するしかない

この原則は経験から引き出すことはできない

経験からは普遍性も確実性も得ることはできない
経験は
・でなければならない、ではなく
・一般に示される、ということだけ

時間の関係についての原則は経験一般が可能になる規則

わたしたちは経験する以前からこの原則によって
経験するための規則を教わるのであり
経験によって教わるのではない

■057 感性による直観の純粋な形式としての時間

(4)時間は論証的な概念でも一般的な概念でもなく
   感性による直観の純粋な形式

異なった時間とは同じ時間の異なった部分にすぎない
<唯一の対象によってしか与えられない像は概念ではなく直観>

異なる時間は同時に存在することはできない という命題は
一般的な概念からは導くことができない
この命題は総合的であり概念だけからは導けない
直観のうちに時間の像のうちに直接に含まれている

■058 時間の無限性

(5)時間の根源的な像は何によっても制約されていないもの
   として与えられていなければならない

部分的な時間は制約によって生まれるものとしてのみ
心に思い描くことができる

時間の全体像は概念によって与えられるものではなく
直接的な直観として、部分的な時間の像の土台となる
(概念は部分的な時間の像だけを含む)

第五項 時間の概念の超越論的な解明

■059 変化や運動の概念と時間

事物の変化の概念と運動=場所の変化の概念は
時間の像を使うことによってのみ
時間の像においてのみ可能

変化とは同一の客体において矛盾対当の関係にある述語が結びつけられること

一つの事物において矛盾対当する二つの規定が結びつくには
それらが継起して現れるしかない
それは時間のうちでのみ可能

力学の一般的な運動論には、多数のアプリオリな総合認識がある
これが可能であることを明らかにするのは時間概念だけ

第六項 これらの概念からえられた結論

■060 時間が主観的な条件でなければならない理由
(a)
・時間はそれだけで存在するようなものではない
・物に付着しているものでもない

人間のすべての直観が成立するための主観的な条件と考えれば
・時間が対象以前に存在すること
・総合命題によってアプリオリに認識され直観されること
が可能となる

■061 直線によるアナロジー
(b)
時間は内的な感覚能力の形式

時間という形式において
自己自身と自己の内的な状態を直観する

時間は外的な現象の規定ではない
時間は事物の形態や位置に属しない

時間は、像が、わたしたちの内的な状態において
たがいにどのような関係にあるかを規定する

この直観はどのような形態も作り出さないので
人間は、無限につづく一本の直線のアナロジーで考えようとする

この直線から時間の性質を推論しようとする

時間と直線のアナロジーはひとつ違いがある
直線のさまざまな部分は同時に存在するが
時間のさまざまな部分は同時に存在せず常に継起する

時間の像はそれ自体がひとつの直観(?)
時間のすべての関係はひとつの外的な直観において表現される

■062 現象が成立するための条件としての時間
(c)
時間はすべての現象一般にそなわるアプリオリな形式的条件
空間は人間の外部の現象だけにそなわるアプリオリな条件

人間が心で思い描く像はすべて人間の心の規定であり心の内的な状態に属する

心の内的な状態は内的な直観の形式的な条件にしたがう
つまり、時間にしたがう

時間は
内的な現象の直接的な条件であり
外的な現象の間接的な条件

すべての現象一般すべての感覚能力のすべての対象は時間のうちにあり
必然的に時間との関係のうちにある

■063 認識の条件と時間

まず自分自身を内的に直観する
内的な直観を媒介として、像を思い描く能力のによって
事物を外的な直観として把握する

対象をあるがままで認識できると考えると時間はなくなる。

時間が客観的な妥当性をもつのは現象に対してだけ。

現象とは、
人間が自分の感覚能力の対象として想定する事物だからであり
時間はこうした現象を直観するための形式だから


心のうちで像を思い描くという人間固有の方法を無視して
事物一般について語るときには
時間は客観的なものではなくなる。

時間は直観の主観的な条件にすぎず主体の外部においては無に等しい

それにもかかわらず時間は
すべての現象に関して
経験に現れることのできるすべての事物に関して
必然的に客観的なもの

誤 すべての事物が時間のうちにある
正 現象としての、感覚能力による直観の対象としての、
  すべての事物は時間のうちにある

■064 時間の「実在性」と「観念性」

<時間は経験的な実在性をそなえている>

すべての対象にたいして客観的な妥当性をもつ

直観は常に感覚的なものであるから、
時間の条件に従わない対象が
経験に与えられることは決してない

時間に絶対的な実在性はない

物自体の特性が感覚能力によって与えられることはない
時間の超越論的な観念性とはこのことを意味する

観念性があるということは感覚の錯誤があるということではない

感覚の錯誤の場合
感覚によって語られる現象が客観的な実在性を持っていると想定されている

時間の場合
客観的な実在性はない
経験的な実在性はある
 対象は現象と見なされている

第七項

■065 時間の現実性の意味

時間に
経験的な実在性を認める
絶対的で超越的な実在性を認めない
高峯一愚『入門』P124)

異議
・変化は現実的
・変化は時間のなかでしか起こらない
・時間は現実的

時間は確かに現実的
内的な直観の現実的な形式

時間は客体として現実的なのではなく
自身を客体として心に像を思い描く方法に関して現実的

もし制約なしに自ら直観できると想定する
変化はひとつの認識を与え、ここでは、
時間の像も、時間に伴う変化の像も現れない

だから時間の実在性は
感性的な制約を受けた人間の経験を可能にするための条件

■065n 時間の規定について

時間は事物に客観的に結び付いた規定ではない