規準と兆候6

ウdィトゲンシdュタインの「規準」(Kriterium,criterion)という概念は、それが『青d色本』で術語的な仕方で、「徴候」(Symptom,symptom)の概念との対比とともに導入されて以来(BBpp.24-25)〔i)、ウdィトゲンシdュタイン哲学の最も重要な概念のひとつとして、多くの議論を巻き起こしてきた?。ウdィトゲンシdュタインの解釈者たちは、彼が多くの著作でこの概念をあまり整合的でない仕方で用いていることを認めつつ、なんとかこの概念に明確な規定と説明を与えようと試みてきた。しかしながら、彼らの規定や説明は、いまだ正確な一致をみておらず、またそれらのいずれも成功を収めているようには思われない。このような現状に鑑みて、小論では、まず規準概念の因って来るところを通時的観点から明らかにする。そして次に規準の多様性から、その概念の従来の規定や説明が不正確であることを示し、そして従来とは異なる観点からその概念のある特質を指摘できることを示唆する。続いて最後に、彼の哲学の普く認知されている前提文法と事実を峻別したうえで、前者を哲学的探究の目標に据えるという前提(cf.PU§ §90,371,373,BGMp.88,Z§ §458,459)一の言わんとするところをより明確なものにすることを試みたい。


羽d地d亮「ウdィトゲンシdュタインにおける規準概念の形成過程」
http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/24581/1/2306.pdf