日記


フレデリック・ワイズマンの映画はおもしろい、ということに尽きます。始まって0.3秒もしないうちにぐいぐい引き込まれて全く飽きる時間がないまま最後まで行き、エンドクレジットが出たときは、「え? もう終わり?」となる。これは嘘ではありません。『法と秩序』も『BALLET』も何度か見ましたが、今回も全く飽きませんでした。今日ワイズマンさんの後で見たキェシロフスキさんの『種々の年齢の七人の女』もバレエの映画だったので比較ができてなんとなく気付いたのですが、ワイズマンさんの映画はクローズアップがほとんどありません。なめの構図(?)というのでしょうか、何かが手前にあってその奥にピントが合っているといった画面もありません。ほとんどの画面で、画面真ん中に全身がくまなく映る程度の大きさのピントの合った人物が映っており、シンプルでストレート、という印象を受けました。それに比べ『種々の年齢の七人の女』はクローズアップや手前に何かが映っているという画面が多く、見たいものが見えない、という気持ちに流れてしまいそうでした。また『種々の年齢の七人の女』はバレエを踊る人の息づかいの荒さが強調されているところがあり、バレエは激しい運動なのだからこういうことは普通にありそうなのにこういうのもワイズマンの映画にはないことに気付かされました。長時間の執拗なドキュメンタリー映画、から想像しやすい印象とは違い、ワイズマンの映画には、生々しい肉体性のようなものはあまりないように思います。『病院』には目の前で激しい嘔吐を繰り返す男性が出てきますが噴き出してしまいそうになるほどコミカルですし、『法と秩序』には殴られて血のにじむ唇を腫らした人物が出てきますが短い時間で通り過ぎてしまいます。淡々としていてシンプルで、字幕も音楽もナレーションも一切ないのに、全く退屈だとも不親切だとも感じないどころか『ドラえもん のび太の宇宙開拓史』や『天空の城 ラピュタ』(すみません……)を見るときに感じるのと同じ種類(同じ種類ではありません)の言い訳一切抜きの楽しさやわくわく感を感じるとても面白い映画でした。