サプライズパーティーは存在しない3

地表近く、自分の胸の位置くらいの高さで、持っていた野球のボールを離すと、下に落ちます。野球のボールから手を離しても下に落ちない、などということはまずありません。野球のボールの中に強力な磁石が入っており磁力で上に引き上げた、とか、突風が吹いており風で吹き上げられた、とかいったことがあれば話は別ですが、そういったことがなければ野球のボールは必ず下に落ちます。しかし、野球のボールから手を離しても下に落ちない、野球のボールが地面に向かって位置を変化させない、ということが、ありえないことかというと、そんなことはありません。可能性の話をすれば、十分ありうることです。もしかすると、今後は、重力の働きが極端に弱くなり、野球のボールの動きにとっては、ちょっとした風に受ける影響のほうが、大きくなる、といったことも考えられるからです。いや、この説明は少し違うかもしれません。たとえばいま野球のボールを持ち目の前で手を離したとして、野球のボールがその空中の位置で静止しているのを見たとします。見てしまったらもうそのことは否定できないと思います。ありそうにないことですが、これを見たら、こうなった、ということなのです。幻覚や夢ということもありえますが、その疑いの方向性はまた別の話です。
ではサプライズパーティーはどうなのか。確かにこれまでずっと激しい暴力を受けていた人がトイレから帰ってくると部屋が真っ暗で……、という目にあえば、パーティーとはとても言えない凄惨な事態がこれから始まるのだ、と思わないわけにはいかないでしょう。しかし、だからといって、サプライズパーティーはありえないと言えるのでしょうか。サプライズパーティーは不可能である、と言えるのでしょうか。手を離した野球のボールが空中で静止することがありえないことではなく、全く可能であるほかはない、のなら、サプライズパーティーも同様に、可能であるほかはない、のではないでしょうか。
いや、やはりそれでもサプライズパーティーはありえないのだ、ありえないと考えざるを得ない、ということが今回の問題なのです。ありえないと考えざるを得ない、といっても、認めたくないがしぶしぶ認める、という意味ではなく、まさにそうでしかない、という意味です。
(つづく)