行動・心の状態、に言及する

二八七
では、心理学は行動を扱うのであって人間の心の状態を扱うのではないとでも言うのか?
(以下略)



二八八
繰り返すが、「彼は不機嫌だった」と私が報告するとき、私は行動について報告しているのか、それとも心の状態について報告しているのか。(「空が今にも降り出しそうに見える」と言うとき、私は現在について語っているのかそれとも未来について語っているのか。)両方である。ただし同時に二つのことをしているというわけではなく、ある意味では一方のことを、また別の意味では他方のことをしているのである。しかしそれは一体何を意味しているのか。(それは神話ではないか? いや、そうではない。)
[『哲o学探o究』S.179]

二九一
看o護o婦が医者に「彼はうめき声をあげています」と言う。――ある時は彼女は「彼はひどい痛みを感じているのです」と言おうとしているのであり、ある時は「彼はうめき声をあげています――どこも具合が悪くないのに」と言おうとしているのであり、またある時は「彼はうめき声をあげています。痛みを感じているのか、ただそうした声を出しているだけなのか私にはわかりませんが」と言おうとしているのである。
[この発言を特定の意味に解するとき]われわれはある前提を立てているのか?――われわれは[今述べた]それぞれの場合ごとに、この言明を異なる仕方で利用しているのである。