実感の延長

重いものほど速く落ちる、ということや、物の落下の速さをそれほど厳密には考えないし観測しない、ということ、は常識的自然観による実感で、実感というのは大体このレベルだと思います。重いものほど速く落ちることを否定する思考実験においては、この常識実感レベルからはかなり離れていると考えられます。ここではもう実感としての重さは頼りにするべき根底的な事実ではなく、そういう常識的実感を検証しようとしているからです。そのようなときに、独立した速さで落下しているふたつの物体をくっつけたときの速さはどうなるか、という問いは、検証対象である常識的実感を使って考えることはできないし、思考実験だけで考えるにはデータが足りない、ように思えます。この思考実験は、思考だけでは扱えない範囲を扱っているのではないか、という疑問が出てきます。ではここで、この思考実験が可能だとしたとき、あるいは、一般的な法則が可能になるとき、そこにはどのような常識的実感がどれくらい入っているか、それは適切な紛れ込み方か、そうであるしかない実感なのか、経験的な実感なのか、少し無理目に入っているのか、というように考えることはできるでしょうか。