永井さん

 哲学的な問題を自分で感じるところから始まります。感じられなければ、考えなくていい。
 
 哲学の思考の仕方には特徴があって、中身の論理的な関係や整合性を中心に読む、これを僕は「ひたりつく」とか「ひたりついて読む」と言っています。つまり、ぴったり張り付くことです。
 
 主張や意見として読まないで、議論として読むこと。意見や主張に賛成したり反対したりせず、議論が論理的に正しいかどうかを読むのです。歴史に名を残す哲学者はみなそういう能力があって、場面によってかなり違うことも言っています。カントが典型です。
 
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFG210AB_S3A121C1000000/?df=2

 役に立つとすれば、哲学的なことを考えると、小さいことがどうでもよくなる。ひとつの考えに固着するのはまずくて、凝り固まるほどのことでないというように考えられるようになる。また、ある枠組みや、その局面を超えて、考えられるようになることでしょう。
 
 コツをひとつ挙げれば、自分の意見に反対することです。自分の意見というのは自然にできてしまいますが、反対の論拠を、考えられるだけ考える。実は他人の意見に反対するほうが難しくて、反論が的外れだったり誤解したりしやすい。自分の意見は自分でよく分かっているから、欠陥を暴きやすく、反論しやすいんです。
 
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFG210AB_S3A121C1000000/?df=2