映画

『凶悪』2013 山田孝之ピエール瀧リリー・フランキー白石和彌 128分(新宿ピカデリー
 
映画の感想として「ぜひ映画館で見たい!」というものがありますがこの映画に関してはそれが出てくる可能性がゼロなのではないか?という感じがしました。それくらいよどみなく話が進みます。1990年代に流行ったサイコサスペンスでほとんどありとあらゆる異常で残虐な(そしてさらに頭が良く警察が常に裏をかかれる)犯罪を経験してしまったあとで、さらにどのような異常性や残虐性が成立するのか、という問題があるのですが、そういう意味ではこの映画は、起こる出来事や登場する人物すべてが全く極まらないまま終わる話です。実行犯は捕まるが死刑にならず残酷さが突出していくのかと思うと舎弟や家族や殺した者を大事に思う気持ちがあり、首謀者は絶対的な頭の良さで逃げ回るのかと思うと捜査が始まるとすぐに捕まり、取材をやめるように言っていた出版者の上司は絶対に取材を許さないのかと言うと23度押せばすぐに取材を許し、取材にのめりこむ記者の家庭は崩壊するのかと思えば最後は妥当な経緯をたどり離婚には至らず、首謀者が捕まったことで取材が終わることもなければ、取材がまだ続くのは正義の追求への情熱があるからではない、といったように、すべてのことが極まらず中途半端になったままずるずる続くという映画でした。