「斉一性の原理」は根拠となるか

四二九
いま私は自分の足の指を見ていない。にもかかわらず両足にそれぞれ五本の指があると思い込んでいるのは、どんな根拠によるのであろうか。
過去の経験は常に私にそう教えた、それが根拠である、というのは正しいであろうか。私にとって、自分の足指が十本あるということよりも、過去の経験の方が確かなのであろうか。
過去の経験というものは、私の現在の確信の原因ではありうるかもしれない。だがその根拠であるだろうか。


ウィトゲンシュタイン『確実性の問題(全集9)』P107