映画

そして父になる』2013 福山雅治樹木希林是枝裕和 120分(新宿ピカデリー
 
家族ファシズム、父親ファシズム映画だと事前に聞いていて、その通りだったのですが、勉強は得意でもスポーツは苦手という状態があるという逃避的(現実ではあまり見たことがない)な主張を含め、現時点ではこういった化石的既成概念強化ファシズムが現実的な力を持ってしまっており、リリー真木家の様子が初めて画面に映り電気屋の客とのわずかな会話と画面数だけでそれが明確に感じられてしまうという画面の的確さと合わせて、非常に真面目な感じはした。最初から最後まで福山さんに思い入れてしまい福山さんが出てくるたびに涙がにじむ展開なのですが、福山さんがリリー化したときの残酷さは見ていられず、それも結局表面上の効果はなしで、「一生許さない」という2つのセリフ、「パパよりもリリーさんのほうが好きなんだ」というセリフが家族の今後の人生に深い影を落とすことを予見して映画は終わる。『共喰い』といい『そして父になる』といい、これまで根強く残ってきたものの強さを繰り返し見せられる展開で、爽快とか新しさとかそこでさらに一歩とか、そういうものはなく、こういうものを見せられると人はこうなってしまうという現実に直面させられるだけのつらい時間でした。