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ベイビーステップ(23) (講談社コミックス)

ベイビーステップ(23) (講談社コミックス)

極論を言ってしまえば、動機がない社会で、薄い人生を生きている人間が、「やりたいことを見つけてそれに邁進していくこと」を描いた漫画です。また「大きな物語」や大目標に駆り立てられるか、好きな女の子に認められたいから頑張るといった、旧来のスポーツ漫画と比較して、「目の前の小さな成長の手ごたえ」を「積み重ねる」という、異様に地味なプロセスを描くだけという点も、非常に秀逸。そしてなによりも、これまでのティピカリーなスポーツ漫画と比較して、圧倒的に地味なスタイルで10巻に到達し、しかもじわじわと人気が上がっているその支持のされ方も、非常に素晴らしい。これが「売れる」のであれば、これまでのマーケティングのスタイルが非常に変わると思うのです。内容で僕が一番ぐっと来るのは、地味に頑張る+論理的に技術を習得していくというプロセス系のスポーツ漫画にありがちな、「すべて論理的に頑張れば勝てる」というような単純な結論に落ち着かないで、論理と練習の果てに、成長する一瞬のチャンスとして、「今までの自分の論理の結果をすべて捨て去るというリスクテイクをして、その結果大失敗!!」したことによって、相手が動揺して勝負のツキを招き寄せるというような、「リスクテイク(現場経験)」が、勝負のや現場の最前線では必要なことを見事に描いている点です。そう!これだよ!と僕は何度も、うなりました。勝負というものの、ある種のギャンブル性をよくわかっている。論理的なアプローチをしていながら、その真逆の方法論に飛び込むことが、ステージを変えることを、見事に描いていて、感心します。・・・凄いよな、、、これだけ地味な作品だと、普通★3つくらいなのに、2009年を通して1位と思うほどの評価になるんだもの、全体を通して読んでいると。

Amazon.co.jp:ベイビーステップ(1) (少年マガジンコミックス)のペトロニウスさんのレビュー