日記
私たちがどこかに注意を向けるという場合には、注意を向けている主体としての「わたし」という存在が前提になっています。脳研究者ですら、この「わたし」が脳の特定の部位の神経細胞活動を増加させるように指令を送っていると考えてしまいがちです。そうではありません。私たちの意図的な注意は、前頭葉の網膜地図上の特定の空間位置に対応した神経細胞活動の増加として現れ、その神経インパルスが同じ空間位置に対応した後方の視覚領域の網膜地図に伝えられてゆくのです。異なった脳領域間で同じ空間位置に対応した神経細胞同士が神経線維で固く結ばれていて、このネットワークを神経インパルスが流れてゆく過程で、「わたしが外界に対して注意を向けた」という意識的体験が成立するのです。
P42
- 作者: 坂井克之
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2008/11/25
- メディア: 新書
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